「盗まれるほど人気な当駅のトイレットペーパー」「あまりにご好評なので販売することとなりました。１個５０円」。道の駅あわじ（兵庫県淡路市岩屋）がトイレに掲げた張り紙がインターネット上で話題を集めている。だが担当者は「実はこのアイデア、他の道の駅から拝借させていただいたものなんです…」。取材を進めると、盗難に困った全国各地の道の駅で連綿と受け継がれてきた防犯対策だった。（伊藤大介）
２月上旬に会員制交流サイト（ＳＮＳ）に写真が投稿されると「皮肉が効いてて好き」「この思い、犯人に届くといいね」と反響を呼んだ。投稿者は「最初はユーモアがあるなと笑いましたが、ひしひしと怒りや困っている感じが伝わってきた」と振り返る。
ポスターを作った企画・広報課の関可菜さん（３６）によると、盗難が最も深刻だったのは新型コロナウイルス禍でトイレットペーパーが品薄になった頃。「盗むのは犯罪です」「警察に通報します」という趣旨の張り紙をしたが、被害は一向に減らなかったという。
頭を悩ませる日々が続く中、昨年６月、熊本県山鹿市の「道の駅水辺プラザかもと」が「盗まれるほど大人気！」というポスターを張り出したのをネットニュースで知り「パクらせていただきました」と関さん。
一方、「道の駅水辺プラザかもと」は「あわじさんから『アイデアを盗ませてもらってすみません』と連絡が来たんですが、うちもよそさまのアイデアを拝借したので…」と申し訳なさそう。聞けば、２０２０年秋ごろ、茨城県城里町の「道の駅かつら」のポスターがネットで話題になっているのを見て取り入れたのだとか。さらに「かつら」に尋ねると「テレビで紹介されていたある商業施設の対策をまねたものです」。
気になる効果だが、「初代」といえる「かつら」では、あまり被害抑止につながらず、数カ月でポスターを外したそう。２代目の「水辺プラザかもと」では、屋内トイレでの被害がほぼなくなったという。３代目の「あわじ」では「被害はやや、落ち着いたかな」と広報担当の関さん。施設によって差はあるが、効果がないわけではないようだ。
話題になったこともあり、「あわじ」では売店で実際に５０円で販売するトイレットペーパーにメッセージを添えることを決めた。アイデアを拝借した経緯に加え、「そのまま持ち帰ることもできたのに、こうしてご購入いただきましたこと、社員一同感謝の気持ちでいっぱいです」と記す。
ポスターをまねする道の駅が絶えないのは、それだけトイレットペーパーの被害に悩まされる施設が多いということ。関さんは「他の道の駅さんにもどんどんアイデアをパクっていただいて、盗難被害が減ってほしいです」と話していた。
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