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Wednesday, May 6, 2020

「引用だから大丈夫」「昔話ならOK」――“読み聞かせ動画”のワナ - ITmedia

 Stay at Homeの掛け声とともに、新型コロナウイルス感染症対策として、外出の自粛が求められている。公園などのオープンスペースにおいても、密接や密集を避けるよう注意喚起が行われ、場合によっては遊具が使用禁止になるなど、小さな子どものいる家庭では、日々のストレス対策に苦慮する場面もあるようだ。そのような状況で、動画投稿サイトで公開されている「絵本の読み聞かせ」や「小説の朗読」が注目されている。

photo 「読み聞かせ 絵本」の検索結果

 絵本の読み聞かせ動画とは、投稿者が市販の絵本のページをめくりながら文章を朗読して見せるもの。YouTubeなどの動画共有サイトでは、一般ユーザーのものと思われる投稿作品が見られる。静止画や写真に投稿者のナレーションを付けた、小説の朗読動画もよく投稿されている。

 これらの動画は、家事や仕事のために子どもの面倒を見るのが難しい親を中心に視聴が広がっているようだ。優しく穏やかな気持ちにさせられる動画もあるだけに、見る側としては、小さな子どもがいなくても、たくさんの読み聞かせ投稿を期待してしまう。

 ただし、このような絵本のよみきかせや小説の朗読動画には、手放しで称賛できない側面もあることを忘れてはならない。著作権侵害の可能性が否定できないのだ。

読み聞かせ動画には権利侵害の可能性あり

 市販の絵本の絵と文章には当然だが作者が存在する。小説も同様だ。ユーザーが作者の許諾を得ることなく読み聞かせ動画を投稿した場合、作者の著作権を侵害することになる。たとえそれが営利目的でなくとも、著作権侵害の事実は変わらない。

 侵害は著作権だけにとどまるものではない。場合によっては、事業者などが持つ「公衆送信権」や「送信可能化権」を侵害している可能性もある。これらは、インターネットを経由して絵本などの著作物を配信したり、配信できる状態にする権利のことだ。

 例えば、作者が「インターネットで公開してもOK」と出版社などに許諾を出している場合、許諾を受けた事業者が自社サービスで配信したり、配信プラットフォームに配信を委託できる。無許諾の第三者が配信を行った場合は、許諾を受けた事業者側の権利を侵害していることになる。

 つまり、今回のようにYouTubeなどで読み聞かせ動画を無許諾投稿すると、作者と出版社などの両方の権利を侵害している可能性が高い。

 さらに、動画投稿により権利者の財産権(経済的な利益)を侵害していると見なされると、最悪の場合、刑事告訴の対象になることもある。小説の中には、米Amazon.comのオーディオブックサービス「Audible」といったサービスで正規に流通している有償タイトルもある。無許諾の朗読動画は、このようなのタイトルの利益を侵害していることになりうる。

photo Audible

 絵本や小説のタイトルそのものが、商標権や不正競争防止法で保護されている可能性も指摘しておきたい。著名なタイトルは、それ自体が商品や作者を認知するための文字標識として機能するからだ。

 場合によっては、商標として登録してあるかもしれないし、たとえ登録されていなくても、有名なタイトルなら権利者が無許諾利用案件に関してクレームを付ける可能性もある。

引用だから大丈夫?

 読み聞かせや朗読動画を投稿している人の中には、「引用」として出典を明記しておけば、権利者の許諾を得る必要がないと考える人もいるようだが、それは大きな間違いだ。小説や絵本をそのまま読むような使い方は、引用とは呼べない。

 引用には幾つかのルールがある。まず、自作した部分と引用元との主従関係が明確でなければならない。例えば、作品の一部を、自分の考えを交えて解説する動画で使う場合は、引用として定義されるであろう。他者の文章の一部を必然性を持って利用する場合は、引用と見なされる。前述のように他者の著作物を丸ごと読み上げる行為は引用とは見なされない。

 こんな事例もあるようだ。市販の絵本の読み聞かせや小説の朗読に、効果音やBGMを追加して二次創作的な作品として仕上げている動画がある。これもアウトだ。絵を撮影したり、物語の文章をそのまま朗読していれば、引用とは呼べない。

 そもそも、オリジナルの絵に手を加えたり、物語に無断で効果音やBGMを付けると、作者の意図しない形態に改変されたと判断される可能性もあり、著作権だけでなく著作者人格権の「同一性保持権」をも侵害していることになる。

権利の切れた昔話ならOK?

 もう一つ勘違いしている事例として、「サルカニ合戦」のような昔話を扱った絵本であれば、著作権が切れている「パブリックドメイン」なので大丈夫だと考える人もいるようだ。しかし、そこにも注意が必要だ。

 例えそれが、昔からの伝承による物語だとしても、それを絵本という形の作品(商品)に仕上げるために絵を描き、物語としての文章を創作した作者が存在することは忘れないでほしい。その作者には、創作者としての権利が発生しているのだ。

 例えば、ディズニーの「シンデレラ」は、シャルル・ペロー(17世紀)やグリム兄弟(19世紀)が編さん・収集した民間伝承をベースにした作品であるが、ディズニーが公開している絵面やストーリーは、ディズニーの創作物であり、米The Walt Disney Companyが権利を保有している。

 紫式部の「源氏物語」はパブリックドメインだが、それを基に現代語に訳し、時代絵巻小説として作品化した「瀬戸内寂聴の源氏物語」の著作権者は、瀬戸内寂聴だ。

 「この絵本はすてきだから広く紹介して、多くの子どもに楽しんでもらいたい」「この小説はみんなに知ってほしい」という純粋な気持ちから動画を投稿する事例もあるようだが、他者の著作権や利益を侵害している可能性があることは心に留めておくべきだ。

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