
【小樽】新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が札幌市と小樽市で発生し、注目を集めた「昼カラ」。日中にカラオケを楽しむ「昼カラオケ」について、小樽の人たちは「昔から盛んだからね」と言う。一方で「なぜ、小樽で盛んなの?」との声も。調べてみると、「港町」独特の歴史的な背景があると指摘する人もいて、探ってみた。
文・写真/前野貴大(小樽報道部)
■「人口比」で突出?
7月18日。小樽市は、花園地区のスナック3店で起きたクラスターの終息を宣言。昼カラの営業自粛要請も解除した。
市内のあるカラオケ喫茶店には、早速、常連客5人が訪れた。60代の女性は歌手中村美律子の「河内おとこ節」を高らかに歌い上げた。「ずっと歌えていなかったので、気持ち良かった」と笑顔を見せた。
一方、感染の再拡大を懸念し、営業再開を見送っている店もある。
クラスター認定された店舗は、札幌、小樽両市とも3店ずつ。人口(7月1日現在)が「約197万人」の札幌市に比べ、小樽市は「約11万人」と、人口の規模に比べ、小樽が突出しているように映る。
「港町の小樽は、もともとスナックが多く、昼カラの広がる素地があった」
そう指摘するのは、月刊カラオケ情報誌「TORA」(札幌)の奥山広康編集長(55)だ。同誌の調べによると、昼カラの店舗数は、最盛期の1990年代後半から2000年ごろ、札幌に約200店、小樽に約60店あったという。人口比でみると、札幌が「約9千人に1店」なのに対し、小樽は「約2500人に1店」と、4倍近く多い。
「港町として歓楽街が発展した上、主な客層となる高齢者が多いなど、小樽には昼カラの栄える土壌があった」と奥山さんはみる。
現在は、経営者の高齢化や後継者不在、人口の減少などに伴う閉店で、店舗数は減少。それでも市によると、小樽の繁華街・花園地区に少なくとも15店舗、郊外を含めると20~30店舗はあるとみられる。
しかし、高齢化率40%を超す小樽市では、「マチの交流の場」として、今も根強い人気がある。
小樽市内の主婦(78)は10年近く、週2回ほど昼カラに通う。退職した夫と四六時中顔を合わせるのも気まずく、外出の機会を増やそうと友人の誘いで始めた。「歌を聴いたり、おしゃべりしたり、息抜きになる」と、その魅力を語る。
■バブル後、急増
全国カラオケ事業者協会(東京)によると、もともと昼カラは、1980年代に関西や中国地方を中心に「カラオケ喫茶」として広まったとされる。
道内では、バブル経済が崩壊した90年代、札幌や小樽のスナックなどが主に夜の営業の収入減を補おうと始め、徐々に浸透した。一方で高齢化が進み、日中の居場所を求める年配客が目立つように。健康にも良く、友人も増えるなど、高齢者の生きがいづくりとしても注目され、盛んになった。
小樽市内の病院などで音楽療法に取り組む「ほほえみ小樽音楽療法研究会」(小樽)の笠原祐子代表(64)は、歌唱の効果について「舌やのど、肺の機能を強化し、食べ物などが誤って気管支に入り引き起こす『誤嚥(ごえん)性肺炎』の予防や、ストレスの発散にもつながります」と強調する。
国内で発生した昼カラ関連のクラスターはこれまで道内のみだが、東京や大阪など道外で昼カラ営業を行う店は多くある。なぜ、道内だけなのか。
「昼カラは高齢者が集まり歌う場所。“3密”になりやすく、潜在的に、どの地域にもリスクはあります」。こう危惧するのは、スナックを学術的に研究する東京都立大の谷口功一教授(47)だ。
小樽もそうだが、防音のため窓の少ない店内で、グループで楽しむケースが多く、感染リスクの高い典型的な「3密」の利用形態だ。さらに、歌う際に大声を出し、感染した際に重症化しやすい高齢客が多いといった条件も重なるため、細心の注意が必要だ。
順天堂大大学院の堀賢教授(感染症対策)は「昼カラ自体は、高齢者の健康増進や交流の場として貴重」と、その意義を認めた上で、「消毒や換気、密集を避けた利用方法を徹底するなど、きちんと対策を講じることが、存続には欠かせない」とアドバイスする。
■「小樽スタイル」で再発防止
「花園から、二度とクラスターを発生させない」
北海道観光社交事業協会(北観協)小樽支部と小樽観光協会は、感染防止を訴え、安全をアピールする動画とポスターを製作した。名付けて「小樽スタイル」。乾杯や回し飲み、ダンスや一気飲みのコールなど、感染の恐れのある禁止行為8カ条を盛り込み、店と客の双方に徹底を求める。
各店も、対策を強化している。カウンターに防護シートを設置し、従業員用にフェースシールドを用意。マイクの数を倍に増やして客の共用を避け、歌う度にマイクの交換・消毒に努める。
利用客にも協力を求める。予約制にして利用人数を制限。来店時に検温と求め、万一、感染者が出た場合、迅速に対応できるよう、会員制にして客の連絡先を把握するなど、できる限りの対策を取る。
北観協小樽支部の加賀透修(ゆきのぶ)支部長(47)は「店だけでなく、お客さんの協力もあって初めて感染対策は成り立つ。安心・安全な環境を小樽全体でつくっていきたい」と語る。
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