満開の桜の下、平和の祭典・オリンピックの聖火が群馬県内各地の名所を駆け巡った。3月30、31日に群馬を通過した東京五輪の聖火リレー。またとないほど絵になる光景に、マスク姿の人々は盛り上がり、そして「密集」した。コロナ禍の自粛ムードが長引く中、イベントは一服の清涼剤であるかのようだった。しかし、感染拡大は収束が見通せず、沿道には複雑な思いで祭りを見守る人たちもいた。【川地隆史、道岡美波、佐藤伸】
31日のスタート地点は、全国的知名度を誇る渋川市の伊香保温泉。石段街の周辺には浴衣姿の旅行客や旅館の関係者らが詰めかけていた。近くの横山實(まこと)さん(82)も当日を楽しみにしていた一人だ。だが、マナーの悪い観客を目の当たりにし、こうつぶやいた。「マスクをせずに注意される人や、大声で話している人もいた。地元の人たちは感染防止に気をつけてこの日を迎えたので、困るなと思った」
「はれの日」だからと、多少は羽目を外すことを容認する声もあった。31日夕に富岡市の世界遺産・富岡製糸場周辺に下仁田町出身のタレント、井森美幸さん(52)がランナーとして登場すると、同市の女性(67)は「沿道は『密』になったけれど、閑散としていたらかわいそう。こんな時は仕方ないですね」と語った。
聖火は同日夜、いよいよ群馬のフィナーレの地・高崎市へ。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の担当者が「人口も多く、お帰りの方が多かった時間で、最も警戒していたエリア」と振り返ったように、ゴール地点の大規模コンベンション施設「Gメッセ群馬」周辺の沿道では、大勢の人々が肩を寄せ合っていた。
沿道の美容院に勤める女性(25)は「警備員が『間隔を空けてください』と言っていたから大丈夫だと思う」と話し、千葉県内から高崎に出張に来ていた男性会社員(51)も「『密』の状態はいかがなものかと思うが、イベントだから」と意に介さない様子だった。
一方、聖火リレーはスポンサー企業の車列が先導し、盛り上げ役を果たしている。医療事務をする同市の女性(54)は「複数の会社が同時に大きな音で宣伝するから、音が混ざって聞き取りにくい。コロナ禍なので1台のバスにまとめるとか、オンラインでやるとか、知恵の絞りようがあるのでは」とポツリ。
同市内で働く渋川市の男性会社員(70)も、遠くからリレーの様子を眺めながら複雑な胸中を語った。「実際に見ると感慨深いものがあり、人が多いのも無理はない。でも、本当に五輪なんてできるのかな。1964年の東京五輪は純粋に楽しめたけど、コロナ禍の今、手放しに『わー』って盛り上がるのもどうなんですかね」
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