わたしのビタミン 藤井康弘さん(61)
短期、長期を合わせて10人余りを里子として迎え入れてきました。今は小学5年生の男の子の父親として、子育てに励んでいます。 これまで育てた子どもの中には、癇癪(かんしゃく)を起こして妻に食ってかかり、部屋のドアを蹴って穴を開けてしまうような子もいました。そんな子も、寄り添い、気持ちを受け止めるうちに、手を出してくることがなくなりました。「偉くなったな」と褒めると、「お父さんとお母さんの自慢の子どもだから」と言って、私たち夫婦を喜ばせてくれました。 子どもたちの成長を間近で感じ、一緒に成長しながら親子関係を築いていけるのが、里親の醍醐(だいご)味だと思います。
里親に登録したのは2007年。末っ子の三男が中学3年生となったのを機に、妻が話を持ちかけてきました。当時は、厚生労働省で里親制度を担当する家庭福祉課長。大変さは分かっていました。しかし、自分の足元に福祉の現場があるのはありがたいと感じ、夫婦で踏み出しました。 08年の春、初めての里子を迎えました。実子3人を育てたので、「もう1人くらい大丈夫」と思っていましたが、経験は通用しませんでした。その子の気持ちや言動を受け止めることができず、4か月で養育を断念しました。その子には本当に申し訳ないことをしてしまいました。 この経験から、同じような悩みを抱える里親を孤立させてはならないという思いを強くしました。困難を感じている里親には、周囲の関係者が支援する手厚い体制づくりが必要だと考えています。 それから約1年半後、児童相談所から、2週間程度の短期委託を打診されました。ためらう気持ちもありましたが、「自然体でいこう」と受け入れを始め、経験を積み重ねました。
18歳で委託期間が満了した後も、奨学金の申請などの相談に乗り、交流が続いている子どももいます。社会人として自立した姿を頼もしく感じます。 里親には、実の親と一緒に暮らせない子どもたちに家庭の温かみや、人と信頼し合うことの大切さを伝える責任があると思います。子どもたちが将来、自分の家庭を持つときの道しるべになりたいです。(聞き手・野島正徳) ◆里親= 児童福祉法に基づき、虐待や貧困といった理由から、親元で暮らせない原則18歳未満の子どもを家庭などで引き受け、育てる人のこと。厚生労働省によると、昨年3月末現在、里親の登録数は全国で1万3485世帯。里親経験者らが5、6人を養育するファミリーホームと合わせて、計7492人の子どもが養育されている。
ふじい・やすひろ
1960年、大阪府生まれ。83年、厚生労働省(旧厚生省)に入省。2007年、妻の珠美さん(62)と里親に登録。同省を16年に退官後、「全国家庭養護推進ネットワーク」を19年に設立、代表幹事に。里親らの交流を促進し、家庭での養育を必要とする子どもたちへの支援拡充に向け、政策提言を続けている。
からの記事と詳細 ( 「お父さんとお母さんの自慢の子だから」…里親として10人余りを育てた元官僚がいま思うこと(読売新聞(ヨミドクター)) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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