「失敗を取り戻したいという選手の思いに賭ける。そういう監督です」
ヤクルトとオリックスが激戦を繰り広げている「SMBC日本シリーズ2021」は、ヤクルトが3勝2敗でオリックスをリードし、27日からはほっともっとフィールド神戸に舞台を移して行われる。第6戦以降でヤクルト高津臣吾監督、オリックス中嶋聡監督の采配で注目すべきポイントはどこか。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として21年間活躍し、ヤクルトでコーチを務めた経験もある野球評論家・野口寿浩氏が分析した。 【写真】オリックス吉田正の妻は「ばり美人」 新妻ゆり香さんらとのスリーショット 20年ぶりの日本一に王手をかけているヤクルトにとって、最大の懸念は守護神のスコット・マクガフ投手だろう。25日の第5戦では同点の9回に登板し、先頭の代打ジョーンズに決勝ソロを被弾。第1戦の9回に2点リードをひっくり返され逆転サヨナラ負けを喫したのに続いて、今シリーズ2敗目を喫した。 それでも野口氏は「高津監督がマクガフをクローザーの座から外すことはありえないと思います。第3、第4戦では走者を出しながらも無難に抑えていますし、何よりバタバタしてチームを浮き足立たせることはしないはずです」と見る。 野口氏は2017年にヤクルトの2軍バッテリーコーチを務めたが、当時の2軍監督が高津監督だった。「例えば、サヨナラタイムリーエラーのような大失態を犯した選手がいたとする。翌日の試合では、その選手を絶対に外さず起用します。失敗を取り戻したいという選手の思いに賭ける。そういう監督です」と指摘する。あとは、この日本シリーズでマクガフが指揮官の心意気に応えられるかどうかだ。
第5戦でオリックス中嶋監督から感じた“焦り”
一方、ヤクルトに王手をかけられた状態で第5戦を迎えていた中嶋監督から、野口氏は“焦り”を感じたと言う。1点ビハインドの4回の攻撃。先頭の福田が右前打で出塁すると、続く宗の初球にヒットエンドランをかけた。しかし、宗は外角高めのボール球のストレートを空振り。福田は二塁ベース上で刺された。 「チグハグな印象を受けました。チームが崖っぷちに追い込まれた状況だったからこそ、手堅くバントで送った方が、チャンスが広がる確率は高かったのではないか。相手バッテリーから見ると、非常に助かった場面でした」と野口氏はいう。 中嶋監督はロッテとのCSファイナルステージでは、第3戦の9回に、相手の虚を突くバスターで日本シリーズ進出を決めた。積極果敢な策が持ち味だが、「この場面に関しては意味合いが違う」と野口氏は見た。もっとも、第6、第7戦の舞台は神戸。地元のオリックスには腰を据えて戦える要素も生まれる。 これまで全5試合が2点差以内という、史上稀にみる激戦となっている今年の日本シリーズ。両監督にとってはギリギリの判断を求められ、胃が痛むような試合が続いている。日本一という形で報われるのは高津監督、中嶋監督どちらか。
宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki
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