ロシアによるウクライナ侵攻などにより高騰しているガソリン価格。そんな庶民の気になるガソリン価格だが、このような状態になる前から、地域によってガソリンが高い地域と、安い地域が生まれていた。地方の郊外に行けば高くなるのではなく、都会でも高い場所がある。
今回は、そのワケは何なのか? そしてガソリン価格の最も高いエリアと安いエリアはどこなのか? について取り上げていきたい。
文/高根英幸
写真/AdobeStock ほか(トップ画像=Norman01@AdobeStock)
■ガソリン価格を決める大きな要因は製油所からの距離
燃料価格の高騰が止まる気配を感じさせない。救いは米国や日本が備蓄している石油を放出することくらいで、まだ増産の気配はほとんど見えない(コロンビアがドイツ向けの供給に意欲的ではある)印象だ。
もっとも脱炭素社会を目指すことを考えれば、石油の使用量は減らしていくべきだから、これをきっかけに脱化石燃料の動きを加速させるべきだとも思う。しかし、現時点では化石燃料がなければ生活が成り立たない。
ともかくドライバーにとって、燃料価格は生鮮食品の価格変動よりも気になるもの。1円でも安いガソリンスタンドを目指してしまうのはドライバーの性というものではないだろうか。
クルマで一級国道(かつての制度だが、いわゆる番号1ケタ台の大きな国道)など長い街道をズーッと走っていると、ガソリンの表示価格が上下動しているのに気付くことがある。ガソリンスタンドによって価格が違うのは当然だが、そうした近隣の微妙な価格差だけでなく、地域ごとに差があるように感じないだろうか。
ガソリン価格は、製油所からの距離が大きく影響している。当然のことながら燃料は製油所で精製され、タンクローリーに積み込まれてガソリンスタンドへと運ばれる。
1回の運搬で最大でも4、5軒のガソリンスタンドへと配送できる程度で、首都圏ならば何往復かして、十数軒へと配送しているかもしれないが、地方では製油所からの距離と1軒1軒の間隔が大きいから、配送できる件数も限られそうだ。
この場合、1軒あたりの配送コストは距離によって大きく変わることになる。これが燃料価格を上下させるひとつの要因であることは間違いない。過疎地であれば1軒のガソリンスタンドに配送するためのコストは当然上昇するし、過疎地の需要は限られるので燃料価格も高めになる。
ちなみにその輸送コストを抑えるために石油元売り各社は、昔からガソリンをバーター取引(融通し合っている)してきた。他社の製油所の方が近ければ、そこから自社ブランド系列のガソリンスタンドへと燃料を配送してもらうのだ。
かつては成分の同じレギュラーガソリンだけをバーターして、ハイオクは独自成分のためそれぞれで配送していたが、現在はハイオクもバーターされているらしい(シェルVパワーだけは独自だとか)。
元売りも統合されて5社(最盛期は15社もあった!)となっており、製油所も整理されているため、コスト削減のためには仕方ないことなのだろう。
■立地条件はガソリン価格に対する影響大!
立地条件もガソリン価格には当然影響を与える。その証拠に東京・青山の青山通り沿いにある出光SSは、都内でも指折りの価格が高いガソリンスタンドだ。
目の前にコーンズ&カンパニー(フェラーリやロールス・ロイス、ランボルギーニの正規ディーラー)があり、周辺にも高級車ディーラーが数多く存在する。ここだけでなく麻布や六本木のガソリンスタンドは全国的に見ても最高レベルの高さだ。
都内の一等地にガソリンスタンドを維持するだけで、それなりのコストがかかってくるが、周辺で給油を利用するのは高級ディーラーか富裕層が大半なので、燃料価格が高くても利便性から納得してくれるし、洗車などで利益も上げられるのだろう。
ちなみに全国で一番燃料価格が安いガソリンスタンドは複数あって、茨城県水戸市、兵庫県姫路市、和歌山県伊都郡、愛知県常滑市に存在する(ガソリン価格比較サイト gogo.gs調べ)。
2022年4月18日の時点でレギュラーガソリンが153円というのは、かなりの安値だ。それぞれに安値の理由は異なるのだろうが、立地条件が影響しているのは間違いない。
セルフ給油かフルサービスか、というのはガソリンスタンドにとってコスト面で大きな差になる要素で、当然セルフ給油のほうが価格が安くなりやすい。しかし実際にはフルサービスのガソリンスタンドでも、周辺のセルフ給油とほとんど変わらない価格を掲げているケースも少なくないのだ。
それはなぜか? 価格差が大きければ、当然安いガソリンスタンドへとユーザーは流れていくことになる。そうなると、フルサービスのガソリンスタンドは売り上げが低迷して困るので結局、価格面でも対抗していく姿勢をとることがあるからだ。
そもそもガソリン自体の利幅はとても小さく、1Lあたりの店舗の利益は5円程度と言われている。それでもやっていけるのは、オイル交換や車検といった、給油を機会に付随したサービスをすることで収益を上げているのだ。
また燃料の利益が薄いことから、一定以上のボリュームの燃料を販売しているガソリンスタンド(1店舗ではなく企業単位で)には、販売奨励金というキックバックがあり、それを利益として燃料を薄利多売しているガソリンスタンドが多い。
そもそも利益が薄い商品なので、とにかくたくさん売ることで売り上げを得て、キックバックで利益を確保するのだ。
そうなってくると1円でも安いところにドライバーは給油に集まり、その周辺にガソリンスタンドも価格のレベルを合わせるように調整しなければ、お客さんを取られ続けてしまう。これが前述の街道筋でも地域によって価格が上下する理由で、一定のエリアごとにそうしたポイントが存在するようになるのだ。
最近は統合が進んで、ガソリンスタンドのブランドも減ったため、街道筋には同じ銘柄のガソリンスタンドがいくつも並んでいるようになってしまったが、実は経営している企業は別の会社で、それぞれがライバルとして凌ぎを削っている。
こうして長い時間をかけて燃料価格の激安地帯(1円の価格差も大きいためにあえてこう書かせてもらおう)は出来上がっていくのである。
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