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Thursday, March 19, 2020

【解説】 新型ウイルスにイブプロフェンは危険? 事実と作り事の区別を - BBCニュース

BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)、BBCモニタリング

インターネットで、新型コロナウイルスに感染している場合、解熱鎮痛剤「イブプロフェン」を服用するのは危険だという話が拡散している。信ぴょう性の高い医療情報と共に、事実をゆがめたメッセージも多く広まっている。

BBCが取材した医療専門家によると、イブプロフェンは新型ウイルスによる感染症(COVID-19)の症状緩和には適さない。一方で、他の病状のためにイブプロフェンを処方されている人は、医師との相談なく服用をやめるべきではないという。

パラセタモールやイブプロフェンにはどちらも解熱作用があり、インフルエンザのような症状を緩和してくれる。しかし、イブプロフェンをはじめとする非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)は誰にでも適しているわけではなく、特にぜんそくを抱えていたり、心臓や呼吸器に疾患のある人は副作用が起こる可能性がある。

イギリスの国民保健サービス(NHS)のウェブサイトは当初、パラセタモールとイブプロフェンの両方を推奨していた。しかし現在は、「イブプロフェンがCOVID-19を悪化させるという強い証拠はないが、(中略)我々がさらなる情報を得るまで、医師からパラセタモールが合わないと言われていない限りは、新型ウイルスの症状にはパラセタモールを服用すること」と、助言を変更している。

NHSはまた、医師にイブプロフェンを処方されている人は、医師に確認せずに服用をやめるべきではないとしている。

コロナウイルスによる病状の深刻さや期間にイブプロフェンが影響を及ぼすのかどうか、明確なことは分かっていない。しかし、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院シャーロット・ウォーレン=ガッシュ医師は、特に健康状態に不安のある人は、「まずはパラセタモールを飲むのが良い」としている。

また、他の呼吸器感染症による深刻な病状とイブプロフェンを関連付ける証拠もある。

間違った情報

しかしこうした助言があるにも関わらず、インターネット上には非常に多くの誤った情報がまん延している。メッセージアプリ「ワッツアップ」上で拡散されている偽情報には、以下のようなものがある。

  • アイルランドのコークで集中治療室に入っている4人の若者は、基礎疾患もなかったが、イブプロフェンを飲んでいた。もっとひどい病状になる可能性もある(偽情報)
  • ウィーン大学では、新型コロナウイルスの症状がある人にイブプロフェンを飲まないよう指示している。「イブプロフェンが体内でウイルスの再生産を加速させており、これがイタリアで多くの感染者が出た原因」だからだ(偽情報)
  • 仏トゥールーズの大学病院に入院している新型ウイルスに感染した4人の若者は、基礎疾患などはなかったがいずれも重症だ。4人とも、症状が出た際にイブプロフェンなどの鎮痛剤を飲んでいた(偽情報)

こうした話は、インスタグラムなどのソーシャルメディアでも見受けられる。

このような切り貼りされた内容の話は通常、「医学知識のある知人から聞いた」という主張が添えられていることが多い。

「偽情報は無視し、削除すること」

アイルランドの感染症協会は、ワッツアップで拡散されているコークでの話は「フェイクメッセージ」だと発表し、見かけ次第「無視し、削除」するよう呼びかけている。

トゥールーズ大学病院も、間違った情報がソーシャルメディアで拡散していると警告。医療上の守秘義務のため、患者の状態などは明らかにしないと述べた。

では、COVID-19とイブプロフェンについて分かっていることは?

イブプロフェンと新型コロナウイルスの関係についての研究はない。

一方で、他の呼吸器感染症については、イブプロフェンが合併症や症状の悪化につながることを示唆する研究がある。しかし、英サザンプトン大学でプライマリ・ケアの研究をしているポール・リトル教授は、こうしたケースでもイブプロフェンそのものが原因かどうかは分からないと指摘する。

専門家の中には、イブプロフェンの消炎作用が人間の免疫反応を「減退」させているのではないかとみる人もいる。

英レディング大学のパラストウ・ドンヤイ教授は、「呼吸器感染症を患っている時にイブプロフェンを服用すると、症状が悪化したり合併症を引き起こすことを示す研究がたくさんある」と話した。

しかし、「健康な25歳の若者がCOVID-19のためにイブプロフェンを飲んで、合併症のリスクを高めることを示すはっきりとした科学的証拠は見ていない」と述べた。

うわさを広めると混乱につながる

イブプロフェンにまつわる懸念は、トゥールーズ大学病院のジャン=ルイ・モンタストルック医師がツイッターで、「新型ウイルスが流行している今、発熱や感染症の症状がある場合の、NSAIDによる合併症リスクについて思い出す必要がある」と発信した後、フランスで始まったようだ。

その後、フランスのオリヴィエ・ヴェラン保健相がNSAIDは「感染を悪化させる可能性がある」とツイートし、4万3000回以上リツイートされた。しかしヴェラン氏は、服用をやめる前に医師に相談するべきだとくぎを刺していた。

他にも、イブプロフェンは「若者や中年で基礎疾患がない人でも重症になる原因になるかもしれない」と書かれたツイートが9万4000回以上、拡散された。

この問題について、医療の専門家からの明確な総意がなかったことが、情報を混乱させ、インターネット上でうわさが流れる原因となった。また、先に示したウィーン大学にまつわるうわさは、英語とドイツ語で同時に生まれたようだ。

ツイッターやフェイスブックで拡散されているメッセージは、ユーザーによって切り貼りされたり、改変されたりしているようだ。だが、その全てに「家族に医師がいる」こと、その人がウィーンの研究所の情報を持っていること、そして「COVID-19で死んだ人の大半がイブプロフェンを服用していた」ことが書かれている。一部では、新型ウイルスが「イブプロフェンで成長する」と書かれているが、そのような証拠は全くない。

ドイツでも、似たようなうわさがワッツアップで拡散されている。多くは若い母親による主張で、ウィーンの研究所がイタリアのCOVID-19の死亡例を研究した結果、その大半が自己判断でイブプロフェンを服用していたというものだ。

ドイツの医薬品ニュースサイトaponet.deは、このメッセージには、主張を支える証拠が一切提示されていないと指摘。

「こうしたパターンは陰謀論にありがちなものだ」と結論付けている。

記事:レイチェル・シュレア、ジャック・グッドマン、アリスター・コールマン

(英語記事 Coronavirus and ibuprofen: Separating fact from fiction

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