新型コロナウイルスの緊急事態宣言下で、乳幼児の親たちが不安を強めている。外出自粛を余儀なくされ、育児関連の行事も軒並み中止となる中、親同士が悩みを打ち明け、助言を得る機会は少ない。孤立が深まると、子どもの発達に悪影響が懸念されるほか、虐待など深刻な事態に至りかねない。「育児の課題や経験を共有できる世の中に早く戻ってほしい」と収束を願う。(佐藤健介)
「ぐずって眠らないわが子の姿に涙を浮かべることがある」。神戸市須磨区で1歳の長男を育てる女性会社員(36)が明かした。「誰もが経験することでも、周囲に話せる人がいないと、『自分だけなのか』と落ち込んでしまう」
産後にホルモンバランスが崩れ、不安定な精神状態に。母親同士のつながりを求めたが、ベビーマッサージなどの育児イベントが相次いで取りやめになった。「この子が出会うのは、マスクで表情が見えない大人ばかり。相手の気持ちをくみ取る力が育たないのでは」と心配する。
昨年の緊急事態宣言の影響で、兵庫県外に単身赴任する夫と数カ月会えなかった。風呂の世話や遊ばせ方などで同居の親と意見が食い違うなど不満もたまる。「たわいなくおしゃべりしながら、悩み事を話す機会がほしい」と訴える。
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神戸市総合児童センター(こべっこランド)=同市中央区=が低体重児らを対象に開く親子教室「YOYO(ヨーヨー)クラブ」。2月上旬の教室には4組の親子が参加した。
「言葉が遅く、健診で『触れ合いの中で成長する』と言われたが、感染が怖くて児童館にも連れて行けない」。同市灘区の30代女性公務員は長男(1)の発達などについて相談した。
助産師で兵庫大看護学部講師の小島光華(みつか)さん(52)から「親子で触れ合いを楽しんで。親の気持ちは子どもに伝わる。言葉は理解できているので様子を見て」と励まされると、表情が明るくなった。
「未熟児で生まれ、肺に疾患があるため、感染すれば命に関わる」「児童館の利用が制限され、公園も“密”で遊び場がない」。ほかの参加者の心配も尽きない。
「親のイライラが子に向かうようなことがあってはならない。クラブが“最後のとりで”となる」と、小島さんは気を引き締める。
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「私、日々何してるんだろう?」。新生児の健康チェックを自宅で受けた母親が暗い面持ちでこぼしたという。
「そう感じるのは、感染への不安から、買い物に行くことさえ怖くて外出できない人に多い。ママの孤立は深い」。担当助産師のイルマズ和恵さん(52)=同市長田区=が懸念する。
ケア施設「親子トータルケアサポート ポスチャー」(同区)を運営し、少人数の育児教室を開き、オンラインでの相談にも応じるイルマズさん。「子どもも他者と接する機会を失えば、発達に必要な刺激や行動が不足する。たくさんの人とつながれる支援を届けたい」と話す。
ベネッセ教育総合研究所は緊急事態宣言発令中の昨年5月、全国の未就学児の母親1030人にコロナ禍の生活や悩みなどを尋ねた。半数以上が「子どもが友達と会えない」、約2割が「親自身が学校園や地域とつながりを持てない」と回答するなど、外出自粛生活で孤独に悩む様子がうかがえた。
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