31日の衆院選投票日には、最高裁判所裁判官の国民審査も実施される。直接投票で裁判官を辞めさせられる唯一の機会だが、過去に罷免された判事はおらず、制度の形骸化もささやかれる。そんな中、元最高裁判事の山浦善樹さん(75)は「裁判官が『仮面』を脱げば、国民との対話の場になる」と訴える。思いの奥にあるのは、自らが審査を受けた際に届いた一枚のはがきだった。 【データで見る2021衆院選】
趣味はバードウォッチング、裁判官の素顔
弁護士だった山浦さんは2012年3月に最高裁判事に就任した。街角に小さな弁護士事務所を構え、市民に寄り添う「マチ弁」を約30年続けていた。その経験から、就任の記者会見では「(裁判の)記録の中に埋もれている悲鳴や叫びをキャッチしたい」と抱負を語った。
同年12月に衆院選が行われた。最高裁判事は、就任後に初めて実施される衆院選の際に国民審査を受ける。山浦さんを含む10人の判事が対象だった。顔写真や略歴、心構えなどを記載した審査公報が全戸に配られるが、山浦さんは過去の公報の形に違和感を覚えた。「法に従い、公正に」「証拠に照らし、適切に」など、誰もが思いつく文言ばかりで、建前に終始し、まるで全員が同じ「仮面」を着けているように見えた。「国民に初めて自分を知ってもらう大切な機会だ」と、先例にとらわれないことを心に決めた。
「著名事件や大型事件を担当したことはありません」「市民は本当に法律によって守られているのか、疑問を感じてきました」。「心構え」の欄には、マチ弁として感じてきたことを素直に書いた。裁判は公正でなければならないが、現実は弁護士を何人も雇える資力のある人が有利になりがちだ。きれいごとばかりではないと肌で感じてきたからこそ、最後に「武器を持たない市民の悲鳴を聞き出すことに全力投球する」とつづった。
バードウオッチングや音楽鑑賞の趣味も紹介した。「近くの公園に行くと、自然の中には地球の仲間がたくさんいることに気付きます」「仕事で疲れたとき、モーツァルトさんが隣に座って話しかけてくれるから不思議です」と、人柄が思い浮かぶように工夫した。趣味を取り上げたのは山浦さんだけだった。
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