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Sunday, November 14, 2021

タマ不足だから儲かった トヨタ、スバル、三菱自の上期決算 - 日経ビジネスオンライン

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 早いもので、自動車メーカー各社の決算が折り返しに入った。2022年3月度、つまり2021年4月1日から2022年3月31日までの、上半期の数字が出そろったのだ。

中間決算発表を行う近健太トヨタ自動車取締役・執行役員(手前)、長田准執行役員(奥)、(写真:トヨタ)

中間決算発表を行う近健太トヨタ自動車取締役・執行役員(手前)、長田准執行役員(奥)、(写真:トヨタ)

 上半期決算で何を見るかと言えば、やはり通期のゴールに向けて、経営が順調に進んでいるか否かだ。これが第3四半期になると、おおよその着地点が確定してくる。

 といっても、その年の市況などによって上半期の数字の意味合いは微妙に違ってくる。今年の場合、おそらく一番の荒れ場は7月から9月の夏にあったと思われる。東南アジアの新型コロナウイルスまん延によるロックダウンなどの影響で、部品供給に大問題が発生し、世界的に自動車メーカーの工場の稼働停止が相次いだ。

 これについてはよく「半導体が原因である」とメディアに書かれていて、各社の発表でも半導体で説明する社もあるのだが、今回最もクリティカルだったのは、インドネシアでのハーネス(配線)の生産だった模様で、その辺りはちょっと情報が錯綜している感もある。ただし、もちろんハーネスだけが問題という意味ではなく、半導体や樹脂製品など多岐に及ぶサプライチェーンでの多発的トラブルと捉えるべきだろう。ただその中心にあったのは半導体ではない、ということだ。

 公表された生産停止の計画がかなりの規模だったので、半期決算は厳しい数字を想定していたのだが、さにあらず。各社とも、大健闘となった。

各社に共通する2つの好材料

 各社の決算が予想を上回った“追い風”の原因は2つある。そもそも決算とは原則的に「昨年との対比」の世界である。半期を昨対比で見たとき、すでに前年がグローバルなコロナ危機の最中であったことから、世界中がほぼ例外なく右往左往していた去年よりは、ワクチンをはじめとする医療や隔離管理など、新しい秩序が固まりつつあった今年は、多少なりともマシなのは当然、ということが1つ。

 もう1つは、こちらはより本質的なのだが、クルマの需要そのものが落ち込んではいないことが挙げられる。部品の入手さえ可能になれば、積み上がった受注残は生産ピッチを上げて取り戻せる。その面ではむしろ工場稼働率の充実につながり、決算へのプラス効果も見込める。

 生産ができなかったことがプラスに寄与した面では、なんといっても需給が締まって売り手市場になったことによって、値引きが大きく減少したことが大きい。

 タマ不足の中でわざわざ値引き合戦をする必要はないので、各社とも販促費(インセンティブ)がグッと抑えられたことで台当たり利益が大きく改善している。もちろんユーザーが欲しいタイミングで商品を提供できない分、機会損失につながることは当然あり得る。例えば、事故ですぐに代わりのクルマが欲しいとか、車検が切れて買い替えたいなどのニーズに即応できない。

 しかしながら今回は各社横並びでタマ不足なので、機会損失の逸失利益が他社に流れようがない。唯一の行き先は中古車だが、そうなれば当然需給も締まる。昨今の残価設定ローンや、リース利用の多さを考えると、想定下取り額を大きく上回る市場価格が形成されるので、メーカー側が、もともとメリットのあるビジネスモデルを組んでいた場合は、ここからもぐいぐいと利益が発生するわけだ。

 さて、その部品不足は、まだ完全解決への道が見えたわけではない。そもそもグローバルなコロナの第n波の流行がいつまで続くのか分からない以上、それによる影響がどうなるのかは、誰にも見通せない。だが、現在の延長上で状況が推移するならば、夏場よりは改善されるか、最良のケースでは年度内には影響がほぼ排除されると言ってよさそうだ。

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