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Sunday, January 9, 2022

退社した元取締役が今だから明かすジェフ・ベゾスの「とある口癖」 | この言葉と姿勢が圧倒的成長を支えた - courrier.jp

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アマゾンの元取締役からは、ジェフ・ベゾスはどう見えていたのだろうか Photo by Pradeep Gaur/Mint via Getty Images

アマゾンの元取締役からは、ジェフ・ベゾスはどう見えていたのだろうか Photo by Pradeep Gaur/Mint via Getty Images

Text by Tom Alberg

アマゾン取締役を長年務めたトム・オルバーグが、創業者ジェフ・ベゾスの意思決定術を公開。アマゾンの圧倒的成功を支えた「言葉と姿勢」が明らかに。前編「アマゾンの4つの経営理念」に続く後編。

アマゾンのリーダーシップ


アマゾンの成功を振り返ってみて、最も重大な意味を持つ理念やプロセスをひとつだけ挙げるのは難しいと、常々考えてきた。しかしあえて選ぶなら、「シングルスレッド・リーダーシップ」という専任的にリーダーを決めるルールだろうか。これは、新たな取り組みに着手する際にとりわけ肝心なものだが、技術面を含めたほかの問題を解決する際にも応用が利く。

シングルスレッド(専任体制)のリーダーシップをひとつ例に挙げたい。ジェフが2004年に、書籍や音楽、ビデオを取り扱うデジタルメディア事業の構築責任者に、スティーブ・ケッセルを指名したことがそうだ。

この事業はのちに、KindleやAmazon Fire、Fire TVなどのデバイスを開発し、動画や書籍のコンテンツも制作するようになった。やろうと思えば、アナログの書籍、音楽、ビデオを統括する既存部署に、デジタルメディア事業への拡大を任せることもできたはずだ。

アナログメディア事業は当時、アマゾン売上の80%を占めていた。しかしジェフは、デジタルメディア事業を専門とするリーダー1人に全権限を与えたほうが、よりスムーズに事業を構築でき、アナログ部門の統括者が兼任した場合に起こりうる混乱や妥協を招かずに済むことがわかっていた。同じリーダーシップは、AWSを立ち上げてアンディ・ジャシーを責任者に任命したときにも発揮されている。

ジェフ・ベゾスの口癖


ジェフはまた、自身の意志決定プロセスを包み隠さずオープンにしている。なかでも、意思決定を「ワンウェイのドア」と「ツーウェイのドア」に分けていることは有名だ。

ワンウェイのドアは一定の方向にしか進めない。つまり、いったん決断したら、それを覆して後戻りすることはできない。たとえば、企業の売却や退職などがそうだろう(例外的に決断が覆ったケースがないわけではない)。

アマゾンの年間プライム会員に送料無料サービスを提供するという決断は、後戻りできないワンウェイのドアだったと言える。

一方、ツーウェイのドアは、あとで決断を覆したり、少なくとも途中で中止したりすることが可能なので、悲惨な結果を回避できる。自社製スマートフォンを開発するという決断はワンウェイだと考えられていたかもしれないが、実際には取りやめになり、スマートスピーカーEchoの開発へと向かった。

ワンウェイの決断を下す際は、十分な時間をかけて検討する必要がある。一方、ツーウェイの場合は迅速な決断が可能だ。ミスをしても問題はない。

スタートアップ業界のベンチャーキャピタリストに共通する考えと同じく、アマゾンでは、失敗は学習のチャンスだ。ジェフの口癖にこのようなものがある。「アマゾンは失敗のエキスパートだ。これまでもさんざん失敗を繰り返してきたんだから」

ベンチャー業界では、事業が失敗しても汚点にはならない。失敗から学んだうえで別の事業を立ち上げ、資金を調達すればいいだけだ。もちろん、失敗の原因にリーダーが抱える深刻な問題点が反映されていることもある。ジェフはスピードを重視する人間だ。そのため、必要な情報や確信が70%しかない場合でも、とりあえずは着手して、軌道修正しながら進行していく。

確信が持てるまで待つことはしない。ジェフはまた、アップルの故スティーブ・ジョブスと同じで、かつてない製品や機能を開発するときに、消費者がそれを好むか否かを知ろうと市場調査をすることには意味がないと考えている。

調査したところで、70ドルのプライム会員や499ドルのスマートフォンが、消費者欲しいものリストで上位に並ぶことはなかっただろう。

「Day1」という姿勢


アマゾンの正式な経営理念には含まれていないが、ジェフが何よりも重視しているのは、未来を変わることなく楽観視する姿勢と、自分たちはまだスタートしたばかりの「Day1(1日目)」だという姿勢であろう。

こうした考え方は、ジェフの独特な笑い声と同じで、会議に出席している従業員にも伝染する。彼はよく笑う人間で、それは本心からのものだ。とはいえ、ジェフはたびたび、自分の笑いを無意識ながらも巧みに利用し、物事の驚くような本質を指摘したり、緊迫したムードを和らげたりすることもある。

取締役会を含む社内ミーティングでは、ジェフは何の躊躇もなく、自身の高い知性や立場を利用して、議題の話し合いで優位に立つ。そうでありながら、他人の話に注意を払い、新しいアイデアはないかと耳を傾ける人間でもある。

私が筆頭取締役だったころ、取締役会に何を求めているのかと、ジェフにたずねたことがあった。彼の答えはこうだ。

「優れたアイデアが毎回、1つ得られれば十分だ」と。

ずいぶん甘く見られたものだと悔しさを覚えたし、取締役会で交わされる意見交換を理解していないようにも思えた。取締役会では、経営報告だけでなく、出席者から多数の質問や意見、提案が活発に出されている。

それにジェフは、相手が誰であろうと、取締役の意見に容赦なく異議を唱える。そこにはときに手厳しさが混じり、心の奥底にある不満や懸念が見え隠れする。

アマゾンの取締役会はたいてい、2日から3日の日程で開かれ、委員会と2度のディナーも行われる。取締役とジェフだけが出席する会議もあれば、ジェフとSチーム(シニアチームの略称)が加わる会議もある。ジェフなしでSチームから1名のみが参加するディナーも必ず1度開かれる。

取締役会できわめて有益なのは、ジェフと取締役だけで行われる会議だ。そこでは、取締役が具体的な疑問を提示する。対するジェフは、自身が懸念する重要な課題5つをリストアップしたものを配り、議論を行う。

その多くは、長期的な計画や技術に関する課題だった。AIや量子コンピューティングといった新しいテクノロジーへの投資が十分かどうかというものが含まれることもあった。取締役とジェフだけの会議は1時間ほど続いた。

私が共同創業したベンチャーグループMadronaでは、ジェフが掲げる「Day1」という哲学を受け継ぎ、創業初日から企業を支援したいという思いを明確に打ち出している。

ただし、ジェフはこの哲学をよりも幅広い意味で用いている。インターネットとアマゾンは成熟し、後期に突入しているようと考える人は多いだろう。しかし、ジェフにとってはまだ始まったばかりなのだ。

アマゾンはもうDay2(2日目)に入ったのではないかという意見もあるし、筆者もそう口にしたことが一度あるが、ジェフはこう反論するだろう。

「いや、まだDay1だ」と。デイ1は、未来がもたらす可能性を楽観視する彼にとって、究極の表現である。自分たちはまだデイ1だという確信がなければ、宇宙事業のブルーオリジンに年間10億ドルもの私財を投じることなどないはずだ。

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