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Saturday, April 2, 2022

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文と写真●石井昌道

 ライトウエイトスポーツとして評価の高いA110を販売するアルピーヌ。現在は1車種のみの展開だが、ルノー・スポールと統合してルノー全体のスポーツカーおよびモータースポーツ活動はすべてアルピーヌ・ブランドの名の下に行われることになる。これまた人気のメガーヌ・ルノースポールも、次期モデルではメガーヌ・アルピーヌとなりそうだ。

 また、次世代ではスポーツカーも電動化は避けられず、次期型A110はBEVで開発している。BEVスポーツカー専用のプラットフォームはロータスとの共同開発になることもすでに発表している。

 じつは現行A110のオーナーでもあり、BEVも好きな自分としては楽しみな反面、ライトウエイトスポーツだからこそ出せる特有のフィーリングを、車両重量が重くなりがちなBEVで実現できるのか不安でもある。そんな近未来へ思いを馳せつつも、今回はA110が復活した経緯や開発秘話なども展開したいと思う。というのも、自分はA110の開発テストに呼ばれたという貴重な体験をしていて何かと縁が深いからだ。

 そもそもA110の復活は、現ステランティスCEOのカルロス・タバレス氏がルノーCOOに就任した当時に決めたという。赤字続きだったPSAを立て直し、FCAとの合併をまとめるという大仕事を成し遂げたカルロス・タバレス氏は、現在の自動車業界でも屈指の経営手腕を持つと言われているが、その一方で自らステアリングを握ってレースに参戦する生粋のカーガイでもある。ルノーはF1活動を長年やってきているのに、スポーツカーのラインアップがないことを嘆き、アルピーヌ・ブランドの復活を決めたのだそうだ。とはいえ、採算ラインに載せることは経営者としては譲れないので外部に仲間を募り、ケータハムと提携することを決定。途中までは共同プロジェクトとして進行していたが、ケータハム側がゴタゴタして降りることとなり、結果的にアルピーヌ単独で市販化まで持っていった。

各国の自動車ジャーナリストが招待されセッティングの異なる車両をテスト。どちらの味付けが好ましいか意見が求められた

 A110がワールドプレミアとなったのは2017年4月のジュネーブモーターショー。国際試乗会が行われたのは同12月だが、開発テストに呼ばれたのちょうど1年前の2016年12月だ。突然フランスのアルピーヌから電話がかかってきて、12月にスペインで2日間のテストがあるから来ないかと誘われた。発売1年前といえば、クルマはほとんど出来上がっていてあとは味付けという段階に入ってきているが、そこでフランス、ドイツ、イギリス、日本という主要マーケットからモータージャーナリストを一人づつ召喚して意見を聞こうという趣旨だったようだ。

 テストのday1はワインディングロードを中心とした一般道、day2はサーキットというスケジュールで、偽装を施したA110のステアリングを握った。最初はワインディングロードで走り始めたのだが、いきなり度肝を抜かれた。先導はA110、自分もA110、そして後方からバックアップカーとしてメガーヌRSという陣容でスタート。スペインの素晴らしいワインディングロードは、けっこうな勢いで走らせても大丈夫なようでほとんど全開だったが、コーナーを2つ3つとクリアするとバックミラーからメガーヌRSが消えた。ニュルブルクリンクのFF最速レコードを誇るモデルであり、腕利きのテストドライバーが乗っているので決して遅いわけではなく、むしろ公道では相当に速い部類だが、簡単に引き離したのだ。それだけA110のコーナリングスピードがずば抜けていたのである。

 シャシーに関しては、もうほとんど出来上がっていたが、サスペンションのセッティング違いが2種類あり、それを2日間でじっくりと乗り比べた。どちらがいいか? という問いに対して4人のジャーナリストがすべて同じものを選んだ。アルピーヌ側もそう思っていたらしいが、そこを確認したかったようだ。選ばれたほうが市販車のセッティングにもなっているのだが、もう1つのほうはリアをもう少しグリップさせて限界を高めたものだった。

 ただし、それをやるとA110らしい素晴らしい回頭性が少し鈍くなるうえに、リアは限界が高いものの超えるときには早い動きでリバースしていく。様々なスキルのドライバーへ向けた場合、リアのグリップはある程度高めてやる必要があるが、やりすぎるとバランスが崩れる。そのジレンマにちょっと悩んでいたようだ。

 エンジンはルノー日産で幅広く使われることになる新規開発ユニットであり、A110が初出となるので、開発はまだ半ばといったところだった。実用車にも使うということもあって低・中回転域は悪くなかったが、高回転域のフィーリングや熱対策が不十分でまだまだやることは多いといった印象だった。

 それから約半年後の2017年5月にはフランスで2日間の開発テストがあり、そこではエンジンやトランスミッションがかなり良くなっていた。細かなところではパドルシフト周りの剛性不足によるマニュアルシフト時の遅れ感、パワーステアリングの直進付近での曖昧さなどが指摘として残った。そしていよいよ市販車のステアリングを握ったのが同12月の国際試乗会であり、細かな不満まですべて解消され、素晴らしいライトウエイトスポーツに仕上がっていた。

2017年に行われたテストの模様。ここで感じられた不満点も、後の国際試乗会では改良され完璧な出来栄えとなっていた

 そんな経緯があって思い入れも強くなっていたので、いつかは手に入れようと思っていたものの、当時は念願だった997型のポルシェ911を買ったばかり。乗り換えるにしてもだいぶ先のことになるだろうと予想していたが、2020年の夏に出物のA110に出会ってしまった。初期限定車のプルミエールで2年経って2000kmしか走行していない個体。997にも乗り続けたい気持ちはあったが、運命的なものを感じて乗り換えてしまった。

 実際に購入して気付いたのは、A110はワインディングロードでそれらしく走らせれば輝くのはもちろんのこと、街や郊外路をゆっくりと走らせるだけでもこの上なく気持ちがいいということだ。軽さによるヒラリヒラリと舞うような操縦感覚が病みつきになり、どこに行くのでも乗っていきたくなる。開発陣はデイリースポーツカーとしての要素も大切にしていると言っていたが、それが見事に実現しているのだ。

 そんなわけでA110との生活を楽しみつつ、BEVになるであろう次期モデルの動向を気にしている。とはいえ、直近ではマイナーチェンジがあり、まだしばらくは現行モデルが生産され続けるだろう。アルピーヌとしては、次期A110相当のスポーツカー、ルノー5BEVのホットバージョン、ポルシェ・タイカンなどに対抗する大型クーペの3車種をBEVとして発売することを表明しており、最初に登場するのは2024年とのこと。どのモデルがトップバッターなのかは明らかにされていないが。A110に関してはもう少し引き延ばして欲しい気もするのだ。

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