4月にプロボクシングWBO世界ミニマム級王者の谷口将隆(ワタナベ)が11回TKOで初防衛した試合は思わぬ形で注目された。同級2位の石沢開(M.T)が前日計量でリミット47・6を2・3キロもオーバーし挑戦者資格を喪失。条件付きの当日計量を経て、王者がKO防衛し“丸く収まった”印象ながら気になる部分はある。
減量で最後に水分を絞り出すのは伝統的な方法だろう。ただ、最近はやや極端な「水抜き」が一部で流行らしい。鍛えた筋肉をなるべく落とさず、水だけ抜いて計量後に一気に回復する狙いだ。計量数日前から意図的に脱水状態を起こし、毎日3~4リットルの水を飲んで5~6リットルを汗や尿で出す。方法を解説してくれた選手は栄養学の本も参考に体内の水分バランスに関係するナトリウム、カリウムのミネラルについて勉強。この方法で10戦以上をこなし「(体調面でも)危ないと感じたことはない」と言う。所属ジムで最初に教えられたのが計量3週前から徐々に水分を抜く方法だったため、キャリア序盤は救急搬送された経験があり「自分で勉強するしかなかった」。指導的立場の人物も自身の成功体験に基づく自己流が多いためか“昔ながらの方法”が必ずしも正解とは限らないのが悩ましい。
一方で関西有力ジムの某トレーナーは、ネットや知人からの情報を基に危うい我流をやりたがる選手が多いと嘆く。「最後は水抜きするけど。それまでは脂肪を落とすことに努め、体から失われた水分は補わないといけない」と力説する。前段落の選手も「水抜きは計量のせいぜい1週前。それまでは普通のダイエットと同じです」と運動及び食事制限により脂肪を落とす手順の重要性を説く。
過度の減量は心身に大きな負担がかかる。日本ボクシングコミッション(JBC)は選手の健康を守る立場から試合当日のリバウンドがリミット体重の8%以上なら階級変更を勧告する。ナチュラルウエートに近い階級での活動を求めるのがJBCの立場で、本当のアスリートファーストだろう。80年代までのように当日計量なら大幅な減量には取り組みにくいだろう。ただ、リング禍を減らす目的で体力回復する時間を少しでも増やすため前日計量が主流になった経緯があり、後戻りは難しい。適切な階級選択を本人らの自覚にゆだねるしかないのが現状だ。スーパーフェザー級(リミット58・9キロ)元世界王者の内山高志は現役時代に「いつ試合が決まってもいいように減量は3キロ程度」と話していた。確かに、試合間隔が空いても試合時と変わらない引き締まった顔つきは印象的だった。
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