少子高齢化に伴う労働人口減少が進むなか、とくに非製造業の中小企業において、人手不足感が高いことが示唆されています。(厚生労働省『令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-』)
そのようななか、限られた時間や予算内で活躍人材を採用しようと、多くの企業が注目しているのが採用DX。
応募者管理や適性検査など、選考におけるさまざまな過程が自動化されるなか、コミュニケーションの場である面接をも自動化するのが、株式会社グレート・ビーンズの「CIY面接台本」です。
今回は、「CIY面接台本」で実現できることや、中小企業の採用活動の現状や課題について、同社CSOの福田雅敏氏に伺いました。
中小企業が抱える採用課題
——株式会社グレート・ビーンズの事業内容についてお聞かせください。福田:株式会社グレート・ビーンズは、Webマーケティング事業と採用DXを実現するCIY(シーアイワイ)サービスの開発・販売事業を展開し、企業規模を問わず、さまざまな企業をサポートしています。
——これまで多くの企業に向き合ってきたとのことで、とくに中小企業が抱える悩みを教えていただけますか。
福田:一口に中小企業といっても、業種やエリア、従業員数によって事情が異なるので、一概には言えませんが、採用活動がうまくいっていない中小企業は少なくないと感じます。
傾向として「母集団形成」「早期離職」「マンパワー不足」を課題として挙げる企業が多いですね。
——それぞれの課題について、詳しく教えてください。
福田:まず、母集団形成の課題は、そもそもどのような人を採用すべきかが明確でないことから生じることがほとんとです。経営者や人事、現場担当など、人によって基準が違うこともあります。
採用基準が不明確だと、入社後にミスマッチが起こり、早期離職につながる可能性が高くなります。選考時に見極めができず、「なんとなく営業職に合いそうだと採用したけれど、実際には合わないようだ」ということが起こるでしょう。
そして、マンパワー不足問題について。中小企業では、採用業務とほかの業務を兼任している人が少なくありません。ひとり人事として、いつも時間に追われているため、採用活動の見直しまで手が回らない人もいます。
これらの課題の解決を目指すものとして、採用DXツールの活用があります。採用活動を自動化することで、属人的でない選考が可能になるほか、採用担当者は余った時間でほかの業務に集中することができます。
採用DXを実現するサービスとして、弊社は、2020年にCIYシリーズをリリースしました。
——CIYシリーズとは、どのようなサービスなのでしょうか。
福田:母集団形成(求人掲載)から適性検査までをサポートするサービスです。
「CIYワーク」では無料で求人を掲載でき、「CIY自社分析」では自社に必要な人材の特性を職種ごとに明確化することができます。そして、「CIY適性検査」では、「CIY自社分析」で出た診断結果と応募者の適性を比較することが可能です。
——CIYサービスと従来の適性検査の具体的な違いを教えてください。
福田:評価のバラつきを解消します。
従来の適性検査では、応募者の特性を分析し、明確にしたとしても、その結果をそれぞれの企業や担当者が解釈するため、評価にバラつきがありました。
CIY適性検査は、自社に必要な人材の特性と候補者の特性の両方を定量的にアウトプットすることが可能です。そのため、自社に必要な人材の特性と応募者の特性とを比較して、どこがマッチするかしないかということが一目でわかります。
適性検査の結果を各自で解釈する必要がなくなるため、人による評価のバラツキをなくすことができるのです。
——適性検査だけで、見極めの精度がかなり高くなりそうですね。
福田:応募者が多い企業や人材系の企業などの面接慣れしている担当の方からは、適性検査だけで「面接の質が飛躍的に向上した」という声をいただいています。
一方で、年間数人?数十人しか面接機会がない中小企業の担当者の方からは、「適性検査の結果をもとに、面接でうまく質問して深堀りすることができない」というフィードバックがあったのです。
そこで、“適性検査の結果から、応募者ごとの質問が自動的にカスタマイズされ、そのまま質問することで、より応募者を深く理解することのできるツール”として、CIY面接台本をリリースしました。
一人ひとりに聞くべき質問をAIが自動生成!「CIY面接台本」
——CIY面接台本とは、どのようなサービスですか。福田:CIY適性検査の結果をもとに、一人ひとりの候補者に聞くべき面接質問をAIが自動で生成するサービスです。
たとえば、CIY適性検査を候補者に受けてもらい、「責任感」について確認する必要があるという結果が出たとしましょう。
この結果をもとに、CIY面接台本は、「これまでのキャリアのなかで、最後までやりきれずあきらめてしまった経験はありませんか?」など、責任感について深く知るための質問を生成します。同じ責任感というテーマでも、適性検査の結果によって、質問内容は変わります。
これにより、面接担当者の「何を聞けばいいのかわからない」という悩みを解決できるほか、担当者ごとで異なる、質問内容や判断基準を平準化できます。
——AIというと、機械的で、人間の内面を見るものとは遠そうなイメージがあります。
福田:CIYシリーズは、個性や強み・弱み、組織行動に関して独学で研究をおこなってきた弊社代表の井上健太郎の知見と、研究段階で実際に得られた50万件以上のデータをもとに開発したアルゴリズムを利用しています。
CIY面接台本では、候補者一人ひとりを深く理解するための質問をAIが生成しますが、この質問を使って、応募者と対話するのは「人」です。AIは、それ自体が合否を判断するものではなく、あくまで人間の判断をサポートするツールだと考えています。
——ちなみに、CIY面接台本を使うと、カルチャーフィットも見極められるのでしょうか。
福田:カルチャーフィットの見極めも可能です。
カルチャーとは、個人の集合体(会社)が生み出すものです。まずは、「どんな特性をもった個人がいれば、 社内は活性化するか」などを自社分析します。
そして、候補者がその特性を持っているかどうかをCIY適性検査を通じて確認すれば、結果的にカルチャーフィットを見極めることができます。
選考は「落とす」ためではなく「理解する」ためにある
——中小企業が採用活動を成功させるために必要なことはありますか。福田:まずは、社員全員がリクルーターという意識を持つことです。
「自分たちはどんなことを目指しているのか」「どのような人と一緒に働きたいのか」など、社員全員が自社についてもっと考えること。
そうすれば、求める人物像や社風を候補者にもっと的確に伝えることができ、「こんなはずではなかった」という入社後のミスマッチを軽減できます。面接担当者間の採用基準の違いも少なくすることができるでしょう。
社員全員が自社のことを考えるようになるためには、経営層が自らビジョンやミッション、バリューを発信するなど、積極的にコミュニケーションを図る必要があります。
そして、選考を候補者を「落とす」ためではなく、「理解する」ためにおこなうという姿勢を持つことも大切です。たとえ入社後にミスマッチだったとわかっても、相手を理解をしていれば、マネジメント次第で早期離職といったネガティブな結末を避けられる可能性があります。採用と育成をセットで考えることが重要です。
「中小企業だから、地方だから」はもう通用しない
——中小企業の採用事情は今後どう変わっていくと考えますか。福田:正解がなくなっていくと考えます。
フルタイム正社員や契約社員、派遣社員、副業人材というように雇用形態の多様化が進んでいますし、外国人や主婦、シニア世代など、これまでなかなか力を発揮できなかった人たちを積極的に採用しようという流れも見られています。
私たちはいま、大きな変化のなかにいるということです。
社会が変化しているにもかかわらず、「今までうまくいっていたから」と方法を変えないと、採用がうまくいかない可能性が高いでしょう。採用の正攻法は、もうなくなっているのです。
また、「中小企業だから、地方だから、採用できない」という考えは通用しなくなるでしょう。 テレワークが進んだ結果、最近では、地方の企業も首都圏の人材を採用できるようになりました。このことからもわかると思います。
労働人口の減少により、人材の争奪戦が激しくなっています。生き残っていくのは、変化に柔軟に対応できる企業だと考えます。
(文・和泉ゆかり)
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