J1再開後、6試合負けなしのコンサドーレ。 チームの好調を最後尾から支える、ゴールキーパーの菅野孝憲選手(36)に 「たっぷり聞く」後編です。
このブログでは、先日のNHKの中継でハーフタイムにお届けしたインタビューで紹介できなかった部分も加え、前後編に分けてほぼ完全版をお届けします。
前編では、7/22のFC東京戦で達成したJリーグ通算500試合出場についてや、
コロナ禍によるリーグ中断中に芽生えた思いについて伺いました。
後編では、菅野選手が「ああいう”オヤジ”になりたい」と話す、ペトロヴィッチ監督(愛称・ミシャ)との3年間について聞きました。札幌に来て、試合出場が減った時期も幸せを感じた理由とは?
―菅野選手は2018年にコンサドーレに加入。加入後は、去年韓国代表デビューも果たしたクソンユン選手(5月に韓国へ移籍)と高いレベルで競い合ってこられたと思います。改めて、クソンユン選手の存在というのは。
菅野
いや、あの年(26歳)でああいう精神的にも落ち着いていて。
もちろんあの身長(195cm)で、あれだけスピードがある選手というのは、なかなかいないなという感じですし、すごく見習う部分、彼から盗めるものもいっぱいありました。
でも、1つ僕が意識していたのは比べる事はやめようかなというか。
彼と僕はスタイルも違いますし、僕のストロングポイントを伸ばしていく事によって、ミシャさん(注:ペトロヴィッチ監督の愛称)のキーパーの選択肢が増えるっていうことだけを意識して。
クソンユン選手に対しては本当にリスペクトしかないですし、この札幌で誰もが、彼が残してきた実績を認めていますし。
その中で僕が出来ることを2年間続けてきたっていう事ですかね。
―菅野さんの記録を見ると、ルーキーの年から毎年本当にコンスタントに試合に出場してこられました。その中で、去年と一昨年はキャリアの中でも本当に珍しい、試合出場が少なかったシーズン(リーグ戦に限ると2019年の1試合)だったと思うのですが、この2シーズンをどう捉えていますか。
菅野
あの本当に僕もそれは葛藤があって。サッカー選手としては本当は、こんなに楽しくちゃ駄目なんだろうなと思っていたんですけど。
この2年間、僕は初めて、やりたい監督と初めてやった2年間だったんで、正直、めちゃくちゃ幸せだったんですよね。
ペトロヴィッチ監督から学ぶものだったり、毎日吸収できるものがすごくあって。
自分が求めるところで自分がこうやってプレーする事って本当に幸せな、でもやっぱり本当に試合に出なくちゃいけないっていう気持ちは忘れていなかったんですけど。
あの本当に数字やキャリアに関してはやっぱり最低の成績かもしれないですけど、精神的には正直一番充実してた。自分のキャリアの。今年もそうですけどね。
ミシャさんとの時間が一番充実していました。
本当はサッカー選手としてはいけないんだろうなっていう葛藤はありますけど、
まあそういうところはすごく感じてましたね。
―改めて、そのペトロヴィッチ監督は菅野選手にとってどんな存在でしょうか
菅野
うん、やっぱり僕はまあサッカーをこの18年間(プロで)やっていて、本当に、初めて僕がやってみたいという人とやっているので今。
対戦相手でやってるときはどうやったらこんなサッカーできるんだろうとか。(監督は)どういう練習しているのかなとか。
いろんな選手とかコーチにいろいろ聞いてましたけど、全然イメージできなかったんですけど、(一緒に)やってみて本当に想像以上というか。
本当に練習の緊張感もそうですし、まあ一番はやっぱり彼の人間性というか。
本当に人として憧れの存在っていうのは、ああいう”オヤジ”になりたいなっていう、誰からも慕われて、本当に温かい男と言うか。
もちろん厳しいですけどね。でもそれはやっぱり僕たちの事を本当に大事にしてくれてるから言ってくれるわけで。本当に憧れの存在ではありますね。
―そういう意味では、ペトロヴィッチ監督のもとでプレーされて3年目。なぜこういうサッカーができるのかっていうのは、答えというか、どんなところが理由か分かりましたか?
菅野
やっぱり規律っていうところが一番ですかね。監督が言う規律っていうかね、本当にチームの規律を守ってあとはとにかく走ると、そして球際で負けないと。本当に基本的な事なんですけど、その基本的な事を本当にどれだけ全員ができるかって事が一番のサッカーの大事なところだっていうのを改めて感じましたし。
あとはまあ彼のそのサッカーのスタイルっていうのはやっぱり他のチームとはちょっと、違うサッカーをしますので。やっぱりその規律っていうところはすごく、痛感してますね。
改めて。
―監督のサッカーは、ゴールキーパーに求められるものも多いスタイルだと思うんですけれども、3年間札幌でプレーをして菅野さんが成長を自身で感じている部分というのはありますでしょうか。
菅野
いやいや全然まだまだ。ミシャが求めている10%もできてないと思いますけど。
もちろんね、ボールをつなぐ事だったり(も求められるが)僕はキーパーでやっぱり一番大事な事は、監督もそうだと思うんですけど、無失点に抑えることが一番の仕事だと思うので。
そこは必ず当たり前の仕事であって、それプラスやっぱり広い守備範囲であったり、ビルドアップ(攻撃の組み立て)にどんどん関わっていくことであったり。
そのプラスアルファっていう意味では、重要度はどんどん広がってきた。
でもまあ一番大事な無失点っていうところは変わらず、今までと変わらずいちばん重要だと思います。
―7/8の鹿島戦後のオンライン会見でも、前の試合の後にペトロヴィッチ監督からプレー面で指摘を受けたとお話をされていました。
菅野
やっぱり(ボールを)奪われる事を恐れてプレーしていたっていうか。もっとつなげる場面で蹴ってしまったり、そういうところで、かなりきつく言われましたね。
まあでもそういう事を言ってくれることが、僕にとってはすごく貴重で。
言われる事で緊張感が出ますし、そういう環境でね、僕は育ってきたので。
どんどん言ってもらったほうが、緊張感も出ますし、もっともっとやらなくちゃいけないとか。自分のスタイルにはあっているかなと。年齢を重ねるとあまり言われなくなっちゃうんで。ミシャはそういうことを年齢・人に関係なくガンガン言ってくれるんで、今後もどんどん言ってもらいたいと思っています。
―「憧れの存在」というお言葉もあったペトロヴィッチ監督のもとでのプレーですけれども。現在J1の通算勝利数では、ペトロヴィッチ監督が195勝で外国人監督1位(注:7/23取材時点 7/31時点で196勝)
そして菅野さんが柏レイソル時代にJ1優勝を果たした時の監督、ネルシーニョ監督は176勝で2位(注:7/23取材時 7/31時点で177勝)なんですね。
菅野さんはお2人のもとでプレーされて、「なぜ勝てるのか」この2人の名将の共通点などはありますでしょうか?
菅野
共通点は間違いなく本当の、真のプロフェッショナルだなっていう。
ネルシーニョさん、ミシャさん自体がもうプロフェッショナルですし、それを僕たち選手にも求める。求めることに対してもすごくプロフェッショナルだなと強く感じますね。
あとミシャさんはやっぱり、ネルシーニョさんもそうですけど、とにかく僕たちを大事にしてくれているというか。
グラウンド外の時は、「家族は元気か」とか。もちろんね、この今の状況では難しいですけど、家族全員で食事をしたりとか。本当に周りの人に、感謝の気持ちを忘れずに、グラウンドキーパーさんからマネージャーさんからすべての人に、感謝の気持ちを言葉で伝えるっていう意味ではすごく、人間性ですよね、本当ね。
「こういう人になりたいな」っていう人がやっぱり、結局、結果も伴ってきてるっていう意味では、やっぱり人間性と結果は比例するんだなっていうのは改めて(2人の)この数字が表せるのかなと思います。
―そこまでいろんな方に声かける監督さんというのはあまりいらっしゃらないのですか。
菅野
いや、みんな声を掛けてくれますけど、特に声を掛けてくれますね。この二人はね。
やっぱり本当に、周りの人を大事にしてるんだなっていうのは伝わりますね。
まあそういう事が伝わるっていうことは、「やっぱりこの人のために頑張りたいな」とか。
「この人に恥をかかせるようなプレーはできないな」とか、そういう気持ちになりますよね。
―菅野さんはネルシーニョ監督とは、2011年のJ1昇格即優勝や、カップ戦のタイトルも獲得されました。ぜひペトロヴィッチ監督ともタイトルを。
菅野
いや、本当にそうですね。(ペトロヴィッチ監督は)本当にタイトルにふさわしい監督だと間違いなく思いますし。
それは、今まで僕が対戦していた相手監督の時も、そう感じてましたし。
やっぱり改めてこうやって一緒に仕事をさせてもらった時も感じます。
本当に、彼は間違いなくチャンピオンになる資質を持った監督なんで、あとは僕たちがね。
どう応えられるかだと思うんで、ここはもう選手次第じゃないかと思ってます。
―では、改めて、会場に来てくれるサポーター、そして現在観客数に制限がある中で、テレビの前で見ている方々に、ゴールキーパーとしてどんなところを見てもらいたいか、メッセージをお願いします。
菅野
先ほどから話していますが、キーパーの仕事というのは、ゼロで抑える事が一番の仕事だと思っています。
それに加えてビルドアップの面であったり、広い守備範囲っていうところを、僕個人としては見てほしいですね。
あとは僕たち11人グラウンドに立つ選手は、本当に覚悟を持ってグラウンドに立っていると思うので。
その覚悟のあるプレーというものを、みんなが少しでも感じてもらえたらいいなと、そして最高の勝利を届けられるように、僕たちも頑張りたいと思います。
(観戦に来られない人は)一緒にテレビ越しで喜んでほしいですね。
2020年7月31日
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July 30, 2020 at 10:18PM
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