コロナでひとり 元気のない近所のお年寄り
夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵は、ひとり台所に立つ女性の心の涙の匂いに気づきました。 「もし そこなおまい様、泣いておられるな?心で」と遠藤が話しかけると、 女性は「瓶のふたが開かない!おこわに栗をのせたかったのに」と言います。 節分用に炊いたおこわと福豆、折り紙でつくった鬼とともにご近所へ配る予定です。 「近所のおじいさん、おばあさんがね コロナでお子さんたちが来られないから元気ないの」 遠藤は「おまい様もですか」と尋ねますが、女性は「うちは元々疎遠なの。次に会うのは私の葬式かな」と笑います。 「家族だってつき合わなきゃいけないわけじゃない 元気なら いいの」 そうつぶやいた女性は「さ 配達に行こ!あのね、歳を取ってもいい男っているのよ たまに減るのが難点だけど」とちゃめっけたっぷりに言います。 思わず笑った遠藤は、女性とともに、ご近所へおすそ分けをして回るのでした。
一人暮らしの高齢者やひとり親家庭が心配
作者の深谷さんは「コロナが心配ではない人はいませんが……」と前置きした上で、「家や仕事を失った人をはじめ、医療従事者の方、入院中の方、それに一人暮らしのご老人やひとり親家庭で頑張っている人が特に心配です」と話します。 ひとり親家庭の保護者が「子どもに食べさせるため、自分は1日1食」などと答えているニュースに心を痛めているといいます。 「もはや自助や共助では間に合わないと思います。コロナの収束を願いながら、自分自身も解決の糸口をみつけて行動していけますように」
マンガ「夜廻り猫」
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。 泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。 そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。 遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。 ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。 ◇ 深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本7巻(講談社)が2020年12月23日に発売された。2月4日から24日まで、京王百貨店・新宿店7階の丸善で「夜廻り猫原画展」 が開催される。
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