10月31日に投開票がおこなわれる衆院選。それにともなって、最高裁判所裁判官の「国民審査」もおこなわれます。ところで、そもそも最高裁判事とはどのような人たちで、どのような仕事をし、どのような日常を送っているのでしょうか。現役、元職の裁判官100名以上を取材し、裁判所の実態を描き出した岩瀬達哉『裁判官も人である』(講談社)より該当部分をご紹介します〔情報は、2018年刊行当時のものです〕。
最高裁判事の日常
最高裁判所の裁判官は、最高裁長官と14名の最高裁判事の15名で構成されている。
全国約3000人の裁判官の頂点に君臨する彼らのうち、内部昇格ともいうべき裁判官からの抜擢が6名。他省庁からの登用が検察官2名、外交官と行政官僚がそれぞれ1名。弁護士会推薦の弁護士が4名、そして学者から1名を起用している。
その主な仕事は、全国各地の高等裁判所や地方裁判所で出された様々な判決を統一解釈し、国の最終的な判断としての「最高裁判例」を確立させることにある。
裁判所の威信を保ち、司法への国民の信頼を高める責務を担っている彼らには、その役割にふさわしい名誉とともに、一般裁判官には及びもつかない処遇が与えられている。有能なスタッフに囲まれた快適な職務環境、安全で広々とした住環境、そして退官後の生活の安定を支えてくれる高額退職金などである。
「高位の法官」たちの日常は、判で押したように決まっている。
毎朝午前9時前、公用車で皇居の桜田壕に面した最高裁判所にほぼ同時に乗り付けるのである。花崗岩で意匠をこらした荘厳な建物の北玄関は、この時ばかりは喧噪に包まれるが、日中は時間が止まったかのような静謐の中にある。再び、喧噪がおとずれるのが午後5時過ぎ、彼らの退庁時間がやってきた時だ。重要な行事などが入っていなければ、最高裁長官と多くの最高裁判事はここからまっすぐ帰宅するという。
国有財産台帳で調べた限り、最高裁判事の官舎はいずれも都内の一等地にあり、一軒あたりの土地面積は平均1072㎡(324坪)。そしてその月額使用料は平均約10万円である。最高裁判事の月額給与約176万円(各種手当を含む)からすると、家賃負担比率はわずか5・7%程度だ。周辺の高級マンション(広さ80㎡)の賃貸料が月額70万円から100万円は下らないことからもわかるように、きわめて優遇された住環境が用意されているのである。
ただ、2011年に発生した東日本大震災に対する復興特別税の導入にあたり、格安家賃で入居できる国家公務員宿舎への批判が高まったことから、最高裁でも最高裁判事の官舎4戸を廃止。さらに3戸を廃止する方針だが、2018年現在、最高裁判事の入居者がひとりもいない11戸の広大な官舎を保有し続けている。
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