「男だから稼がなければ」「長男は家業を継ぐのが当たり前」-。11月19日の「国際男性デー」を前に、熊日の「SNSこちら編集局」公式LINE(ライン)が実施したアンケートでは、67%が「男性だからという理由で生きづらさを感じることがあると思う」と回答。男性は自らの問題として、女性はパートナーや母親の立場から、「男らしさ」という固定観念に悩む姿が浮かんだ。(清島理紗)
◇収入で判断
宇土市の会社員トモさん(26)は「男は稼いで一人前という考えがいまだに強い」と感じている。子どもの頃、周囲の大人が近所の男性の収入額をうわさするのをたびたび聞いた。社会人になった今も、職場の40~50代は収入にこだわりすぎているように見える。「なぜ他人のことをそんなに気にするのか不思議だと、同世代の友人とよく話す。稼ぐ金額だけで人間性を判断しないでほしい」
共働きが増えたにもかかわらず、男性を「大黒柱」と見なす社会通念は根強い。「収入は男の方が高くなければならないという意識が、特に九州は強い」と熊本市の30代男性。稼ぐためには長時間労働が当たり前という状況に、同市の40代女性は「家事の分担を求めたくても、夫の職場はそういう環境ではない。夫は家庭と職場の板挟みになっている」と気遣う。
「重労働は男性という暗黙の了解がある」(30代男性、大津町)、「男は結婚しなければならないという職場の空気が苦痛」(30代男性、熊本市)などの声もあった。
◇「我慢、泣くな」
「男らしさ」を求める雰囲気は教育現場にも残る。若い世代ほど「男だから」という価値観の押しつけを敏感に感じとっていた。
御船町の中3男子は転校前に男性教師の言動に悩まされた。女子生徒から嫌がらせを受けても「男なら歯を食いしばって我慢せなん。泣くな」と言われ続けた。校則違反をしても、女子は許され、男子は激しく叱られることもあった。「なぜ男だけ…」と登校が苦痛になった。40代の母親は「先生の態度は、男子生徒の居場所をなくすものだ」と憤る。
10代男性からはほかにも「女子はロングヘアにできるが、男子は許されない」(宇城市)、「スポーツが不得意だと『男のくせに』と言われる」(熊本市)などの疑問も寄せられた。
◇価値観に縛られ◇
「夫自身も従来の価値観に縛られ、苦しんでいる」と話すのは、菊陽町のパート、プーさん(51)。男尊女卑の考え方が根強い親に育てられ、息子にも「男らしさ」を強要。妻には働くことを禁じていた。
「夫は部下に強い物言いをして泣かせてしまい、上司に注意された。『男が泣くとぞ』と私に話したので、男でも泣くし、そこまで追い詰めるのがいけないと諭した」とプーさん。以前は妻の意見を聞くこともなかったが、「最近は若い人との考え方の違いを理解しようと努力している」。少しずつ、変わろうとしているように見えるという。
「パーソナリティー(人格)と生まれつきの性別は関係ない」。熊本市の20代女性も、性別に縛られない考え方が広がることを願っている。(文中は仮名)
●国際男性デー 1999年、カリブ海の島国トリニダード・トバゴで始まったとされる。男性の健康に目を向け、ジェンダー平等を促すのが目的。欧州、アフリカなどの複数の国々でさまざまなイベントが行われる。日本でも近年、男性特有の生きづらさについて考えたり、ジェンダーの問題について議論したりするイベントが開催されている。
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