北京冬季オリンピックのスノーボードで日本勢は金メダル1個、銅メダル2個と計3個のメダルを獲得し、大会を終えた。昨夏の東京五輪のスケートボードに続き、結果にとらわれずチャレンジ精神をたたえ合う「横乗り」競技の魅力を発信する一方、採点競技としての難しさも残した。
「誰が何位でも出られたことがすごい、ここに来られたことがすごい、とたたえ合う姿が、横乗り競技にはある。アナ・ガサー選手が1位を取った時も一番に駆け寄って、本当におめでとうという気持ちを心の底から伝えたかった」。女子ビッグエア(BA)で、日本女子の冬季五輪史上最年少で銅メダルをつかんだ村瀬心椛(ここも、17歳)=ムラサキスポーツ=は、一夜明けた16日の記者会見で、この大会で見せたスノーボードの魅力をこのように表現した。
BAだけではなくハーフパイプ(HP)やスロープスタイルなどあらゆる種目で、互いを尊敬し合う雰囲気に満ちていた。例えばHPでは今大会で現役引退するショーン・ホワイト(米国)が、優勝して取材を受けていた平野歩夢(23)=TOKIOインカラミ=の元に歩み寄り抱き合った。
平野歩は決勝で超大技「トリプルコーク1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)」を3本とも成功。「歩夢の時代が来た。君のことを誇りに思う」と語るホワイトに対して、平野歩も「結果どうこうじゃない、というのがショーンと僕の中ではうっすらとつながっている。ショーンはこの場で、自分にしかできないチャレンジをしたと思う。そういう背中はリスペクトしている」と応じた。2人の姿は、今後も語り継がれる象徴的な場面となった。
技ごとの明確な基準点なく
一方で五輪種目に採用され、競技化が加速するスノーボードの浮き彫りとなった課題もある。それが、採点基準の透明化だ。HPの決勝では平野歩が2本目にほぼ完璧なルーティン(技の構成)を決めたのに得点が伸びず、各国の関係者らからもブーイングが起きる一幕があった。
HPでは6人のジャッジが高さ、技の構成、独創性、着地などの要素を、総合的に100点満点で判断する。一方で、技ごとの明確な基準点などは設定がなく、ジャッジの個々の判断に委ねられる部分が大きい。
平野歩は優勝から一夜明け、記者会見で「僕以上に怒っている人もいた。ジャッジの基準としてどこを見ていたのか説明を聞くべきだと思う」と指摘。「幅広くいろいろなスタイルがあってこそ」とスノーボードの魅力を理解しつつ「競技は競技で高さやグラブなどを、測れるようなものを整えていくべきだと思う。大会と大会ではないものを切り分けるべき時代になってきたのでは」と言及した。
選手たちは技の高難度化が進む中で、常にけがや恐怖心と向き合い闘っている。「競技やっている人は命を張って、リスクを背負っている。そこは整理して、スルー(放置)しない方がいいと思う」。金メダリストの言葉は重い。【角田直哉】
からの記事と詳細 ( 挑戦たたえ合うスノボだから「スルーできない」 金メダリストから宿題 - 毎日新聞 - 毎日新聞 )
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