19日、高校野球群馬大会3回戦、樹徳6―1高崎商大付
「さぁ、いこうか」
高崎商大付の攻撃が始まる時。大きなかけ声とともに、ベンチ前から2人のランナーコーチが飛び出す。2人はそれぞれのコーチボックスを超え、外野の芝生まで全力疾走。ゆっくりとボックスに戻る。
攻撃が始まれば、「お前ならいけるって絶対」「ベンチもっと盛り上げていこう」。体を大きく動かしながら、打者に声援を送る。時には味方のベンチにも。
2人は山岡岳(3年)と立川浬有(りある)(3年)。山岡は一塁、立川は三塁のランナーコーチを務める。
全力疾走する理由について、2人は口をそろえる。「自分たちはサポート役なのに背番号をもらえた。感謝の気持ちと、戦う気持ちを全力疾走で示したくて」
新チームになったばかりの昨秋、立川は悩んでいた。同級生のレベルが高く、練習についていくのに精いっぱい。チームのことを考えるとこう思った。「自分の練習より、サポートをした方がいいのでは」。秋の県大会では、三塁ランナーコーチを務めた。
全体練習後には、自慢の大声で盛り上げながら、仲間にノックを打つようにした。仲間は「立川、ありがとう」と感謝してくれる。だが、「裏方をやってることは親に言えなかった」。埼玉から来たのに、このままでいいのか。一冬悩んでいたという。
そして春。「山岡も少しノックを打とうよ」。控えの山岡を全体練習後のノックに誘ってみた。同じ埼玉県出身で仲が良かっただけでない。部で一番明るく、ムードメーカーだったからだ。そんな山岡とならサポートも頑張れると思えた。
最初は乗り気ではなかった山岡。レギュラーへの道を諦めていなかったからだ。始発の電車に乗り、朝6時半からバットを振る日々。結果がなかなか出ない。仲間から感謝される立川を見るうち、「高校野球はプレーが全てではないのかなと。自分も立川のようにチームのためになれたら」と思い始めた。
春の大会後、2人で練習終わりにノックを打つようになった。そして2人で話し合い、全体練習時に守備や打席に入るのをやめて球拾いや声出しを担った。「チームのサポートに全力を尽くす」という覚悟を決めるためだった。
最後の夏の大会。樹徳との3回戦で敗れはしたが、2人は大きな声援と全力疾走を貫いた。
立川は「プレー以外で貢献する目標は達成できた。一緒に頑張ってくれた山岡に感謝したい」。山岡は「最後の夏に控えの自分がベンチに入れたのは立川のおかげ。高校野球やりきったと胸を張って言い切れる」。そうはっきりと話す声は、かすれていた。(吉村駿)
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